建物の消滅と借地権

Q:父親が借地上の建物で一人暮らしをしていたのですが、火災を起こして全焼してしまいました。このため、地主から「建物がない以上借地権も消滅したから返還してほしい」と言われています。このことは事実なのか確認したいのですが?

A:専門用語における滅失と朽廃
建物が火災や地震・水害のような自然災害などで倒壊や焼失した場合、業界用語で滅失といいます。滅失には、人為的な取り壊しにより建物がなくなった場合も該当します。
一方で築年数の経過で建物の老朽化が進んだ、腐食を起こした、このような理由で建物としての機能を失った状態のことを朽廃といいます。ちなみに滅失も朽廃も建物がないに等しい状態ではありますが、両者は処理上区分されます。ちなみに上の質問者の状態で言えば、滅失に該当します。

借地上の建物が、存続期間中に滅失した場合の借地権の取り扱いですが、地主の指摘するような滅失すれば即失効ということはないです。旧借地法を見てみると、滅失に関しては一切の規定がないですから、土地を明け渡すように地主に要求されたとしても拒否は可能です。

朽廃した場合の取り扱い
では建物の老朽化で朽廃した場合、借地契約も満了前であればどうなるかですが、旧借地法では借地権が消滅すると書かれています。しかし平成4年に施行された借地借家法の規定を見てみると、特別記載はありません。ということは平成4年以降に借地契約を交わして、老朽化により建物が朽廃の状態になったとしても借地権は引き続き有効であると解釈できます。

ただし旧借地法でも借地借家法でも、存続期間が満了になった場合に滅失でも朽廃でも借地上に建物がない場合には、借地契約の更新が認められなくなります。もし建物を失って、その借地で引き続き生活をしたければ、速やかに建物を建設するのが賢明です。もし建物建設が間に合わない場合でも、建物を建築する旨などを掲示した立て看板を土地上に設置すれば、建物の代わりになり契約更新は可能となります。